2013年7月刊『自衛隊員が泣いている』三宅勝久

「赤旗」2013年9月8日 評者 種田和敏(弁護士・自衛隊をウォッチする市民の会事務局)

 自衛官は全国に約25万人います。約21万人の郵便局員、約28万人の警察官と匹敵する大規模な集団です。
 もっとも、郵便局員や警察官ほど自衛官の日々の仕事や生活は見えてこないというのも現実です。他方、最近はメディアなどを通して、自衛隊が私たちの前に露出する頻度は増えています。
 しかし、私たちが接する自衛隊のイメージと現実の自衛隊はどうも違うようです。本書では、私たちがなかなかうかがい知ることができない自衛隊の内部、自衛官の実態が具体的な事件を通じて紹介されています。
 本書のプロローグで紹介されていますが、護衛艦「たちかぜ」の乗員が自殺した事件について、自殺した自衛官の父親が「私は、自分が息子を殺したと思っています。私が自衛隊を勧めたために、健太郎はわずか二一年六ヶ月の人生に幕を引きました。その後悔の念でいっぱいなのです」と裁判で訴えたことが印象に残ります。
 自衛隊入隊を勧めた父親がなぜ後悔しなければならなかったのか、この言葉が自衛隊のイメージと現実のギャップを象徴的に表現していると思います。
 若者をまるでモノのように使い捨てるブラック企業という言葉が一般的になりつつあります。本書の目次にあるとおり、自衛隊内部では、濡れ衣、暴力、隠蔽が公然と行われ、破滅へと向かう現実に自衛官は直面しています。しかし自衛官にも人権があり、個人として尊重されることは当然です。
 自衛隊はブラックか?
 その答えは、この本の中にあります。

 

「日刊ゲンダイ」2013年10月17日

巨大組織・自衛隊の実像

 国民からの好感度が過去最高を記録する一方で、年間10万人あたり35~40人と省庁の中でも突出して自殺率が高い自衛隊の実態を告発するルポ。

 04年に自殺した護衛艦「たちかぜ」の乗員の遺族が起こした裁判で浮かび上がる古参隊員の常習的ないじめと規則違反。この裁判では、廃棄されたという文書の存在が内部告発によって分かり、組織そのものの隠蔽体質までもが明らかになる。その他、隊の互助会費を盗んだと濡れ衣を着せられた隊員を自殺に追い込んだ警務隊の強引な捜査や、「徒手格闘」という戦闘技術の訓練中に起きた事故死事件などが証明する日常的暴力、そして幹部と取引業者との癒着など、理不尽な事件の詳細から巨大組織の実像をあぶり出す。