2012年8月刊『被爆アーチストの旅』月下美樹著


『朝日新聞』2012年9月5日(広島版)付 

被曝芸術家が自伝 広島の月下さん 被災地での交流も
被爆者でアーティストの月下美樹さん(71)=広島市安佐北区可部町綾ケ谷=が自伝「被曝アーチストの旅」(花伝社)を出版した。4歳での被爆体験から、東京電力福島第一原発事故後に訪れた福島での避難者との交流をまとめた。
「被爆者として放射性物質に不安を感じている避難者を励ましたい」と、計8回福島県内の避難所や仮設住宅を訪れた。 昨年6月に初めて避難所を訪れた時、メッセージボードは全国から届けられた「絆」や「団結」といった言葉で埋まっていた。月下さんは「なんとなく空々しいものが、避難者の間にあると感じた」と記す。
家族や家を失った避難者が求めているものは、何よりも原状回復だと感じた。避難者の心に寄り添えるような言葉をと、縦1メートル、横4メートルの紙に「生」「気」という2文字を墨で書いた。 避難者から求められて描いた文字で最も多かったのは「縁」だった。
避難所で出会った佐藤フクイさん(71)は、津波で夫と一人息子を失った。息子の腕時計を常に左腕にはめていた。月下さんに「こうやって私が生かされ、みんなと出会ったのも縁。主人と息子をなくしたのも縁。私が生きていれば、主人や息子も浮かばれるだろう」と語ったという。 月下さんは4歳の時、爆心地から約4キロの戸坂村(現・広島市東区)で被曝。1987年、広島市にうどん喫茶「墨詩(すみのうた)」を開業。墨を使った現時油作品を飾り、夜は平和を訴えるコンサート会場に。米国、沖縄と移り住み、2010年広島に戻った。
月下さんは「あと何年生きられるかわからないけれど、これからも作品を手がけていきたい」と笑った。本は税込み1575円。(倉富竜太)


『読売新聞』2012年8月25日(広島版)付 

平和や原発考えて 被爆体験など冊子に 安佐北区 月下さん
福島第一原発事故で被災した人々を支援してきた広島市安佐北区の芸術家・月下美樹さん(71)が、自身の被爆体験や、被災地での活動をまとめた「被爆アーチストの旅」(花伝社)を出版した。
月下さんは4歳の時、広島の爆心地から4キロで被爆。家族は無事だったが、戦後周囲の偏見にさらされて自らが被爆者だと明かせない時期もあり、苦しんだ。
今回はそうした体験に加え、「被爆者として放射能の問題は見過ごせない」との思いから福島県南相馬市で続けている活動を紹介。昨年6月に原爆で被爆したアオギリの種やその苗を持って訪れて以来、出会った被災者の悲しみや苦しみ、活動を通じて培われた絆についても触れている。
月下さんは「読んだ人が、戦争と平和、原発などについて自分なりに考えてほしい」と話している。